4.22.2014

佐渡 無名異焼の里


先日佐渡まで焼き物を見に行ってきました!!

みなさま無名異焼きをご存じでしょうか?
朱鷺や金山で有名な佐渡にも独自の焼き物があり、その代表的なものが無名異焼です。
佐渡に行かれた方はお土産コーナーに売られているのを目にしているのではないでしょうか?「むみょういやき」と読むその焼き物は、真っ赤なきめの細かい土が特徴です。

全国の焼き物の中ではあまり有名な方ではないけれど、大きな魅力を秘めている気がして、以前からとても気になっていたやきものです。





佐渡には中学生くらいの時に家族旅行で来て以来。

4月始めの佐渡はまだ観光シーズンではないようでしたが、のんびりとした雰囲気でとてもよかったです。泊まった部屋からは美しい海岸が見え、日本人であることの幸せを感じられました。

美しい風景に加え、魚介やお米屋やお酒もおいしくて。今回の旅の目的は半分は焼き物、もう半分は食べ物であるのが正直なところ。。。^^;






焼き物の話に戻りますが、無名異焼の窯元数は現在18軒ほどだそう。今回私は北沢窯さん、数右衛門窯さん等の工房にお邪魔させてもらいました。

無名異焼の主な原料である無名異土は、金を採掘している時に同時に堀りだされたものだとか。今でも金山周辺ではこの無名異の土を採ることができるようです。この土は元々は傷口に塗る薬であったそうです。消毒殺菌の効果があったのでしょうか。

鉄分を多く含んでいるため、焼く前から真っ赤な色をしており、素焼きの段階でも、本焼き後もあまり大差のない赤い色をしています。ところが焼く前と後ではなんと大きさが30%も小さくなるというかなりの収縮率。お茶碗を作るためにはどんぶりを作るくらいのイメージでしょうか。。。


粒子が細かいため本焼き後はあまり水を吸い込みませんので、釉薬無しでも食器として使われます。釉薬をかけた物も作られていますが、やはり代表的なのは真っ赤な土色を生かしたものといえるでしょう。土の素材感をそのまま味わえる器って素敵ですよね。


釉薬をかけなくていい焼き物とは、なんてらくちんで便利なんでしょう?・・・と思いたいところですが、そこには釉薬掛けより手間のかかるのではないかと思える作業があります。「生磨き」と呼ばれる、生素地の表面をこすって磨く作業です。ガラスのヘラや金属のコテなどで丁寧に表面を擦り、最後には布で磨くという作業があってこそ、釉薬をかけずともつるっとした表面となっているわけです。





窯元の方のお話によれば、この器で飲み物を飲むと鉄分がとれるとのお話。そして使えば使い込むほど器には艶が出てくるそうです。多くの場合は無名異土だけでなく、野坂粘土を混ぜて使っているそうです。野坂粘土は同じく佐渡島内の土ですが、こちらは田んぼなどで採れる土で、無名異土に混ぜることで成形しやすくしています。北沢窯の方が丁寧にご説明して下さいました(^-^)

真っ赤な焼き物にしあげるには、酸化焼成しなくてはいけませんので、今では電気窯で焼くのが一般的だそう。佐渡内は薪も豊富にはないこともあり、今では薪窯はほとんど焚かないようです。 還元や炭化で焼けば、黒っぽい色になりますのでそれもまた魅力的ですが、やはり無名異焼としてはきれいな赤が珍重されてきたようです。


無名異焼きに関連した重要無形文化財保持者(人間国宝)は2人いらっしゃいます。伊藤赤水さんと三浦小平二さんです。

以前に伊藤赤水さんの作品を国立近代美術館工芸館で拝見した時は、その大胆さと力強さ、そして今までに見たことのない赤土の赤さに感銘を受け、しばらくじーっと見つめてしまったことを覚えています。その作品は一般的な無名異焼きのイメージとはまた違った荒々しい作品でした。他にも赤水さんの作られている作品で印象的なのは練り込み作品です。30%も縮む土ですから、ヒビや歪みを出さずに白い土と組み合わせての模様作りをするのは、たくさんの試行錯誤の末に出来上がっていることが想像できます。無名異のカラーを活かしながら、とても華やかな作品となっています。

芸術品・工芸品としての焼き物と普段使いの焼き物に違いはありますが、人間国宝がいることでその焼き物全体の評価や知名度を上げていることは間違いないように思います。







伊藤赤水さんもそうですが、三浦小平二さんも代々続く無名異焼窯元のご子息です。佐渡の窯元をそのまま継ぎませんでしたが、無名異土を使った「青磁」の作品を制作し、重要無形文化財技術保持者に認定されています。東京に住まいを構えていながらも佐渡の誇る陶芸家であり、ご本人も佐渡に対する強い想いは持ち続けていたことと思います。亡くなった今も「三浦小平二小さな美術館」として佐渡にギャラリーが残っています。







火山の噴火で出来た佐渡島の豊かな鉱物資源がもたらす、真っ赤な土。江戸・明治と日本最大の金銀山として栄えた町も、今はその賑わいもなく、落ち着いた観光地として少し物寂しげな雰囲気もあります。栄枯盛衰のはかなさが無名異焼を味わい深いものにしているように私には感じます。また、時代の流れに振り回されず、真面目に仕事を続ける姿こそが無名異焼きなのかなと思いました。

無名異土には際立った特徴もあり、とても魅力のある焼き物ですので、今後ももっとたくさんの人に知られ、愛されるやきものになっていけばいいなと思います。