3.30.2014

板谷波山の夢見たもの @出光美術館

波山は私が日本の大学で陶芸を始めた時からの変わらぬ憧れ。これは見逃すわけにはいかないっということで、なんとか最終日に行ってきました!!

板谷波山の作品をたくさん所蔵している出光美術館は、窓から皇居も見える素敵な美術館です。今回の展示は没後50年の回顧展という特別なもの。代表作はもちろんのこと、製作途中の作品、釉薬の美しい天目茶碗や中国陶磁器を模した作品や図案などもあり、私が今まで見た波山の展示では1番見応えがありました。

板谷波山は、岡倉天心に美術史を学び、高村光雲に彫刻を学ぶという、恵まれた環境に育った明治昭和の芸術家です。子供の頃からやきものに興味を持っていたそうですが、当時まだ今で言う東京芸大には陶芸科がなく、やむなく彫刻科に進んだとのこと。そこで磨かれた抜群の描写力と立体感覚が、のちの陶芸作品に活かされているのは一目瞭然ですよね。

板谷波山は陶芸に芸術としての価値を求めて個人の芸術家として作陶した人物としても重要な存在です。その志は美術学校に入る前から持っていたからこそ、職人になる陶芸の道を選ばず、芸術を学ぶ為の学校へ入ったのでしょう。なぜ芸術家として制作することにこだわったのでしょうか?陶芸を、絵画や彫刻などと並んだファインアートとしての位置づけをしたかったのでしょうか。人間国宝を辞退したという行動からも見えるのは、伝統に囚われない新しい事をやりたいという波山の強い意志。それが波山を「芸術家」にさせたのではないかと思います。


余談ではありますが、その後に無名の職人の仕事を評価する民藝運動に賛同した濱田庄司が、板谷波山の教え子であるのはとても興味深いところです。一見合判している動きのようですが、どちらもやきものの芸術としての価値を高めたという点で共通しています。波山は芸術としての価値を高め、その価値をもっと身近な存在にまで持って来たのが浜田庄司らなのではないかと解釈もできるのではないかと、私は思います。


上品でどれも完璧すぎる波山の作品。きっと本人も完璧主義であったのではないでしょうか。形は東洋風、模様は西洋風。それは西洋化近代化しつつも変わらぬ日本人としての根底にあるものの存在の対比と共通している気がします。波山は海外に出たことはなく、全て海外からの出版物などから西洋の美を学んでいたとのこと。(現在海外の陶芸雑誌を数種類購読している私としては、少し親近感を持ってしまいます 笑) 西洋への貪欲な興味、自然への賛美、東洋陶磁器への敬意、すべてを取り込み自分の作品にまとめ上げた波山。私自身の制作にもヒントにしたいような、ヒントにするには程遠いような・・・・。

ああだこうだ言いながらも、結局は理屈抜きに誰もが美しいと感じるのが波山の作品の1番の魅力だと私は思います。そういうものを私もいつか作れたらいいなと、改めて思う展示でした。今回は図録もゲットして大満足。いつもなかなか思いきれずでしたが、増税前で背中を押されました。笑

ところで、今回の展示のタイトルにありますが、波山の夢見たものはなんだったでしょうか。。。?

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