だいぶ前になりますが、三越本店で「15代楽吉左衛門展 ~フランスでの作陶~」をみました。仕事前であまり時間がなく、たったの15分という短時間でしたが、とても見応えのある展示でした。
見に行こうと思ったのも以前に智美術館で今泉今右衛門展を見ていた時、「今回の展示はいつもと違ったなかなか思い切ったものになっている」と、館内に居合わせた人が話をしているのが耳に入ったから。おそらく関係者のようでした。私はその「いつも」を知らないのですが、そんな話を聞いたら行かずにはいられなーい!!ということで、滑り込みで見に行ったのでした。
楽焼についてはその絶対的な地位の高さというか、そのブランドとしての価値に魅力を感じてはいましたが、あまり現在進行形のものとしてのイメージを持ったことはなかったのが私の正直なところ。そんな時、タイムリーにテレビでも楽吉左衛門さんの特集をやっていました。それを視て感じたのは、伝統をそのままの形で受け継いでいるのではなく、新しいことにチャレンジすることで伝統を守っているのだということ。三越での展示からも伝統を守ること=革新を続けること、そんな言葉が伝わってくるようでした。それもそう、今回の展示はすべて楽吉左衛門さんがフランスに滞在し制作したものだそう。なぜ、あの楽家がフランスに??とすごく意外に思えました。更に驚きなことは、作品はアメリカンスタイルの楽焼だということ!!
話は飛んで、何年も前に私がニューヨーク州のある田舎の大学で陶芸を学んでいた時。。。クラスメイトが楽焼きをするから見にいってみなよと先生に言われ、屋外の窯場へ行ってみると、独特の異臭とともに焼きあがったキラキラとまるでコガネムシのように輝く壺。「・・・こ、これ楽焼きじゃないよね?」と、衝撃を受けたのを覚えています。楽焼きと言ったら、赤とか黒の侘び寂びな茶碗のこととしか頭にない私には、たいそうな衝撃でした。こんなの代々の楽家の人が見たら、笑っちゃうだろうなとそんな風に思っていたものでした。
日本から紹介された楽焼は、アメリカ人に気に入られ、更なる進化を遂げ、形状は茶碗に限らず器からオブジェまで、色もメタリックなものがあったりと。楽焼は身近な表現方法や装飾方法のひとつとして用いられるようになったようです。
楽焼がアメリカで愛されるようになった理由は、まずそのアトラクション性の高さにあると言えると思います。その場で焼きあがるのが、とにかく楽しい!更にそこへアメリカ人の自由且つ合理的な発想が加わり、楽焼は異国の地ですっかり陽気で面白いヤツに変わってしまったという感じで。アメリカでは楽焼は派手な焼物のイメージではないでしょうか。
それを本家本元の楽さんがやっているなんて。。。無知で保守的な私は少し複雑な気持ちでしたが、吉左衛門さんの枠の中に留まらないスタイルには脱帽してしまいました。ご本人の意図はどうなんだろう・・・と、ちょうど会場にはご本人がおられたので、時間さえあればお話しをしてみたかったです。。。残念
吉左衛門さんは芸大で彫刻を専攻し、
イタリアに留学をされたそう。広い視野と才能を持っていらっしゃることと伺えます。そんな方が日本の伝統を受け継ぐ人であるのが、素敵なことだなと思います。今後もサプライズを与えてくれそうな現代陶芸家ですね。
・・・楽焼が当初は「今焼」と呼ばれていたように、現在も「今焼」であり続けているように思えたのでありました。
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